鉛レス素材を使った非鉄金属製品のライフサイクルアセスメント
これまでの快削性を有する銅合金は、切削加工性を高めるため鉛の添加が不可欠でした。給水栓を始めとする水栓金具にも鉛を含んだ銅合金が使用されており、水道水への鉛成分の溶出が人体に悪影響を与えることが問題視されるようになってきました。世界的には鉛の溶出に対する規制が強化されており、アメリカでは、11ppb以上の溶出が確認された給水装置は使用が禁止されるなど厳しい措置がとられています。産業界においても廃棄物を処理する時点でのシュレッダーダストに含まれる鉛が環境に悪影響を与えるとして、自動車や家電メーカーなどを中心に、鉛の削減活動が活発になっています。
このようなあらゆる分野での鉛レス化のニーズを受けて、キッツは、鉛をほとんど含まない給水用のバルブや黄銅棒の開発に着手しました。そしてさまざまな研究を重ねた結果、キーパロイが誕生しました。
■KEEPALLOYとは?
KEEPALLY(キーパロイ)−KITZ Enviroment&Ecology Protection + Alloy−“環境と人を守るキッツの銅合金”

KEEPALLOYは米国で開発されたセビロイ材をベースに、KITZ独自の生産技術と、材料特性を更に向上させたKITZ鉛レス青銅鋳物材料及び鉛レス耐脱亜鉛黄銅棒の総称です。
新しく開発した「KEEPALLOY・鉛レス耐脱亜鉛黄銅棒」は、6−4黄銅をベースにした黄銅棒で、快削黄銅棒と、鍛造用黄銅棒の2種類の材料があります。
従来の材料は快削性を得るために、数パーセントの鉛(Pb)を添加してありますが、新しく開発したKEEPALLOYは、鉛の含有量を極力抑え、その代わりにビスマス(Bi)等の元素を添加することによって快削性を得ております。
さらに耐脱亜鉛性を得るために、従来からKITZが持っている耐脱亜鉛性に関する材料技術も付加し、完成した新しい材料がKEEPALLOYです。


快削黄銅棒 鍛造用黄銅棒
鉛の含有量を0.2%以下に抑えることにより、厚生労働省による鉛の浸出量の基準値をクリアーしています。 鉛の含有量を0.2%以下に抑えることにより、厚生労働省による鉛の浸出量の基準値をクリアーしています。
機械的性質は、JIS H 3250(銅及び銅合金棒)に規定されるC3604(快削黄銅)と同等以上の性質を持っています。 機械的性質は、JIS H 3250(銅及び銅合金棒)に規定されるC3771(鍛造用黄銅)と同等以上の性質を持っています。
耐脱亜鉛腐食性は、ISO6509(国際標準規格)及びJBMA T−303(日本伸銅協会技術標準)のいずれの方法においても、KITZの従来耐脱亜鉛黄銅棒(KZメタル)と同等の性質を持っています。 耐脱亜鉛腐食性は、ISO6509(国際標準規格)及びJBMA T−303(日本伸銅協会技術標準)のいずれの方法においても、KITZの従来耐脱亜鉛黄銅棒(FZメタル)と同等の性質を持っています。
切削性は、C3604を100とした切削性指数で表すと89以上を有し、また切粉の状態及び切削加工面の仕上がり状態もC3604と同等の性状を有しています。 熱間鍛造性は、アプセット試験方法によると、C3771及びKITZの従来耐脱亜鉛黄銅棒(FZメタル)とほぼ同等の特性を持っています。
切削性は、C3771を100とした切削性指数で表すと87以上を有し、また切粉の状態及び切削加工面の仕上がり状態もC3771と同等の性状を有しています。
KEEPALLOY及び比較材料としてC3771、C3604の素材の顕微鏡写真を示します。


KEEPALLOY C3771
(鋳造用黄銅棒)
C3604
(快削黄銅棒)


熱間鋳造用 切削加工用 熱間鋳造用 切削加工用






試験方法
KEEPALLOYを使用したJIS 10K青銅ねじ込み仕切の呼び径1/2"を用いて、JIS S 3200-7(水道用器具-浸出性能試験方法)に従って、鉛その他の浸出性能試験を行いました。供試バルブの弁箱、ふた等の主要部品は青銅製で、弁棒には耐脱亜鉛黄銅棒を使用してお、KEEPALLOY及び従来材の2種類のバルブで評価しました。なお、試験は山梨県薬剤師会環境衛生検査センターにて実施いたしました。
試験方法
基準値は、厚生労働省によります。
検査項目 基準値
(mg/)
評価値(mg/)
鉛レス青銅仕切弁 JIS青銅仕切弁
0.05以下 0.005未満 0.029未満
ビスマス 管理項目外
KEEPALLOYを用いた青銅鋳物及び耐脱亜鉛黄銅棒の各々の材料に含まれる鉛、ビスマスは、いずれもほぼ同量含まれています。
評価
KEEPALLOYを用いた鉛レス青銅仕切弁からの鉛の浸出量は、現状の基準値より遥かに少なく、また2003年に予定される将来の基準値をも十分クリアーする値となっています。
KEEPALLOY及び比較材料としてC3771、C3604の機械的性質の代表例を示します。

材料 製造方法\性質 引張り強さ
(N/mm2
0.2%耐力
(N/mm2
伸び
(%)
硬さ
(Hv)
シャルビー
吸収エネルギー
(J)
密度
(g/cm3






KEEPALLOY 押出し材
(丸棒)
402 195 27 118 28.9 8.41
C3771 押出し材
(丸棒)
350 140 45 90 29.4 8.42
JIS規格値 315以上 15以上





KEEPALLOY 引抜き材
(丸棒)
415 329 23 135 23.6 8.43
C3604 引抜き材
(丸棒)
375 185 20 120 22.4 8.46
JIS規格値 335以上 80以上
※機械的性質は、同一材料でも押出し、絞り、熱処理条件等によって異なります。
※シャルピー衝撃試験は、20℃でJIS Z 2202の4号試験片を使用しました。
試験方法
国際規格(ISO 6509-1981)方式
75℃、1%のCuCl2(CuCl2−2H2O 12.7〜12.8g/l)溶液に試験片(暴露面積100mm2以上)を24時間浸漬した後、暴露面の腐食深さを測定しました。
試験結果
種 類 材 料 最大脱亜鉛深さ(μm) 脱亜鉛のタイプ
鍛造用黄銅棒   KEEPALLOY 60 局部腐食
従来耐脱亜鉛黄銅棒(FZメタル) 70 局部腐食
C3771 1450 層状腐食
快削黄銅棒   KEEPALLOY 10以下
従来耐脱亜鉛黄銅棒(KZメタル) 10以下
C3604 1370 層状腐食
評価基準

規定なし。ただしEN規格(ヨーロッパ規格)で以下の規定があります。

グレードA: 最大脱亜鉛深さ:200µm以下
グレードB: 最大脱亜鉛深さ:400µm以下
  平均脱亜鉛深さ:200µm以下
旋削及び穿孔加工条件
方 法\条件 切削速度(m/min) 回転数(rpm) 送り量(mm/rev) 切込み量(mm) 切削状態
旋削加工 92 1500 0.1 1.5 ドライ
穿孔加工 22 830 0.16 ドライ
φ 30の棒材を加工した時の条件を示しています。
評価結果
KEEPALLOY(切削用)の切削性はCAC406とほぼ同等で、良好な切削性を示しています。
材 料 切削性指数(%)
 切削加工   穿孔加工 
C3604 100 100
KEEPALLOY 89 94
従来耐脱亜鉛黄銅棒(KZメタル) 92 97
CAC406(BC6) 87
※切削性指数=([C3604の切削抵抗値]/[各材料の切削抵抗値])×100
切粉の観察結果
C3604
【切削用】
KEEPALLOY
【切削用】
従来耐脱亜鉛黄銅棒
【KZメタル】
CAC406(BC6)
【青銅鋳物】
鍛造用KEEPALLOYの鍛造温度は720℃〜760℃を推奨致します。ただし、鍛造するワークの大きさや形状及び鍛造条件によって若干上下する場合があります。実際のワークで試し打ちの上、最適な鍛造温度を確認してから鍛造することを推奨致します。
鍛造後500℃×2時間以上の熱処理を行うことを推奨致します。熱処理を行うことによって、耐脱亜鉛性のより向上と残留応力の除去を図ることが出来ます。
(注意)製品選定の際は、必ず当社まで詳細情報・注意事項などをご確認ください。